鶫の書

鶫書房房主の古書蒐集と読書の記録です。

行路詩社、寂光

 2022年2月16日である。ネットで購入した本が届く。

 

 小池守之『墨東惜春譜:行路詩社ノート』(東銀座出版社・2011年)帯 100円。

 若守菊枝『寂光』(私家版・1931年)函 800円。

 

 『墨東惜春譜』は松倉米吉、早川幾忠らの「行路詩社」に関する研究書。540頁前後の労作。

 『寂光』は享年24歳で亡くなった著者の遺族が刊行した歌集。小さな本で、田中敏哉が表紙画を描く。著者は金子元臣門下。心のこもった集で、歌集というものは本来こうあるべきもの。名利に走る歌人は、こういう集を見て心を静めていただきたい。

 ちなみに『寂光』という歌集名は、他に吉植庄亮の第一歌集『寂光』(短歌研究会・大正10年)があり、原奈保子の遺歌集『寂光』(杉風会・昭和13年)があり、戦後には佐野とき江『寂光』(女人短歌会・昭和28年)、タニー・アイスイ『寂光』(世界詩人連盟・昭和33年)があり、また、北杜夫の第一歌集として『寂光』(中央公論社・昭和56年)があって、これはよく知られている。続いて横田純太『寂光』(手帖社・昭和57年)がある。それから稀覯本として、岩佐東一郎の自筆歌集『寂光 一九廿二』(私家版・大正11年)があり、若干17歳の折の歌集。吉植庄亮がわずかに一年先んじていた。