鶫の書

鶫書房房主の古書蒐集と読書の記録です。

読書

平山亜佐子『問題の女—本荘幽蘭伝』(平凡社・2021年)について

2022年8月7日(日)である。 題記の書物であるが、ちょっと気になった点があったので記す。編集者の間違いではないのだが、再版や増補版の出版が検討された場合には訂正してほしい点がある。 133頁。1907年に上野公園で開催された東京勧業博覧会で目撃された…

光瀬俊明『AとBとの手紙:獄中でよみがえった魂の記録』

2022年4月27日である。 光瀬俊明『AとBとの手紙:獄中でよみがえった魂の記録』(講談社・昭和45年)。 光瀬俊明(1899-1974)は、倉田百三(1891-1943)の書生だった人で、大正14年に倉田が主宰して岩波書店から発行していた求道的文藝雑誌『生活者』の実…

暗い時代を暗い時代として感じないこと

2022年4月25日である。 「近代日本宗教史」第2巻の『国家と信仰——明治後期』(春秋社・2021年)の末木文美士「第一章 総論——帝国の確立と宗教」を瞥見。「四 大逆と宗教」で、明治43年(1910)の大逆事件が、「思想や言論に携わる人たちにとって、まさしく「…

買った本

2022年3月13日である。 特に何もないが、最近購入した本の報告。 藪道子『つむぎの人:館山一子の歌とその生涯』(崙書房・1996年) 500円 原奈保子歌集『寂光』(杉風会・昭和13年) 232円 石毛源歌集『江南戦線』(砂子屋書房・昭和14年) 函 100円 植原秀…

書狼書豚

2022年3月12日である。 表題に掲げた「書狼」「書豚」という言葉は、辰野隆の随筆「書狼書豚」によって知られている。その意味するところは下に記すが、それとは別に由良君美『椿説泰西浪漫派文学談義』や池澤夏樹『見えない博物館』による紹介があり、その…

「櫟原」第54号

2022年3月9日である。 千葉県市原市の鈴木仲秋先生より「櫟原」第54号を賜る。毎号楽しみにしている。 【見る】は市原市武士古墳群(武士三山塚)の馬頭観音の碑のお話。鈴木先生のこれまでの見聞から、この近くを通っていたとされる藩道との関わりが語られ…

昭和26年の歌壇言葉

2022年3月6日である。 片山貞美「現代歌人論」を読もうと『日本短歌』(日本短歌社・昭和26年10月号)を読んでいたら、「歌壇言葉ニユウ・ルツク」という埋め合わせの欄があって、そちらのほうが面白かった。「あなたの心に浮んだ歌人の名前をこの下にあては…

早稲田、古本屋、飴

2022年3月3日である。 それにしても早稲田の古本屋街のさびれかたには悲しいものがある。昨年のことだが、私は十数年振りに訪れて、そう感じた。買いたい本も店頭にはほぼなくて、たまにあったとしても値札が昔のままなのか、高い。BIGBOXや穴八幡の古本市も…

澄宮(三笠宮)、庄野英二、童謡

2022年2月28日である。 庄野英二『鶏冠詩人伝』(創元社・1990年)に、こんな挿話がある。 庄野(1915‐1993)は大正11年(1922年)、父貞一が初代校長を務めた帝塚山学院幼稚園に入園したのだが、当時、大正天皇の第四皇子である澄宮(後の三笠宮、1915‐2016…

福田栄一、この花に及かず

2022年2月25日である。 福田栄一の第三歌集は『この花に及かず』(洗心書林・1948年)。 これは今はなき短歌新聞社の「短歌新聞社文庫」にも入っていて、この文庫本(1996年)はわりと安く手に入る。ただ、元本となると意外と入手困難である。昭和19年夏から…

矢ケ崎奇峰、良寛、子規

2022年2月24日である。 以前に購入していた歌誌「槙の木」昭和24年4月号。復刊第一号であり、矢ケ崎奇峰翁追悼特集号でもある。 これは窪田空穂門下の岩崎睦夫を中心とした槙の木会を母体とする短歌雑誌で、長野県松本市で発行されていた。 前年4月15日に逝…

高階廣道、釈迢空

2022年2月23日である。ネットで購入した本。 高階廣道『橿の生』(高階研一・1957年・再版) 100円 これは再版で、初版は昭和23年(1948年)に刊行された。内容における初版との違いは巻末に家族による思い出の記が追加されたことである。父・研一は初版でも…

歌集なき歌人、渡邊光風

2022年2月20日である。 自分の歌集を編纂していて思うことがある。 十代の終わりからの作品を一応は記録してあるのだが、当然ながら現在の眼から見て、歌集に採録出来る歌など一首も無い。二十代もそうだ。これはちょっと驚きでもあったが、当然のことかとも…

井伏鱒二、夏の狐

2022年2月19日である。 井伏鱒二『場面の効果』(大和書房・1966年)に「夏の狐」という短篇が収録されている。昭和8年に書かれたものだそうで、これより先に『夏の狐』(三島書房・1947年)に収録されている。 自分が小さい頃には「狐にだまされた娘」がい…

秋艸道人、題簽

2022年2月18日である。 高橋文彦著・財前謙編『會津八一題簽録』(武蔵野書院・2005年) 1180円。 小笠原忠編『会津八一歌がたみ 奈良』(宝文館・1979年) 新装版 帯 300円。 いずれもネットで購入。題簽録はまだ新刊も売っているけれども、良い本。八一が…

秋艸道人、時漬け

2022年2月17日である。郵便物の発送等のついでに、古書ワルツ荻窪店に行く。 宮川寅雄『秋艸道人随聞』中公文庫(中央公論社・1982年)帯 110円。 高瀬広居『仏音:最後の名僧10人が語る「生きる喜び」』朝日文庫(朝日新聞社・2004年)帯 110円。 山田無文…

行路詩社、寂光

2022年2月16日である。ネットで購入した本が届く。 小池守之『墨東惜春譜:行路詩社ノート』(東銀座出版社・2011年)帯 100円。 若守菊枝『寂光』(私家版・1931年)函 800円。 『墨東惜春譜』は松倉米吉、早川幾忠らの「行路詩社」に関する研究書。540頁前…