鶫の書

鶫書房房主の古書蒐集と読書の記録です。

平山亜佐子『問題の女—本荘幽蘭伝』(平凡社・2021年)について

 2022年8月7日(日)である。

 

 題記の書物であるが、ちょっと気になった点があったので記す。編集者の間違いではないのだが、再版や増補版の出版が検討された場合には訂正してほしい点がある。

 

 133頁。1907年に上野公園で開催された東京勧業博覧会で目撃された「預言者」を名乗る男と筒袖の女性、の件である。日露戦争後に我が国では「自称神仏」が続出したことは承知の通りだが、この時代に「預言者」を「自称」する男といえば、まず宮崎虎之助を思い浮べるのが、読書人というものである。これを「神風会」の宮井鐘次郎だと推測するのは、どうにも意味不明である。「預言者」を名乗る男が宮崎虎之助であるならば、筒袖の女性は、当然、辻説法では彼の隣に必ずその姿を見かけた妻・宮崎光子であると考えてよいであろう。

 

 この推測の件は、木村悠之介氏の研究ブログにも言及されていることで、しかもこの推測の元になったのは、木村氏の修士論文である可能性もあるようなので、いまさら記すのも気が引けるが、もし宮崎虎之助について分からないことがあれば、柏木隆法亡き後、宮崎虎之助研究の第一人者を「自称」する私に、ご連絡いただきたいと思う。修士論文から推測するというのは、ちょっと……。憎まれ口を叩くようですが……。

 

 とはいっても、本書は非常に興味深い事実を多く含んでいるので、おすすめしたいと思う。私も『問題の男—宮崎虎之助伝』を早く書いてみたいと思っている。