鶫の書

鶫書房房主の古書蒐集と読書の記録です。

昭和26年の歌壇言葉

 2022年3月6日である。

 

 片山貞美「現代歌人論」を読もうと『日本短歌』(日本短歌社・昭和26年10月号)を読んでいたら、「歌壇言葉ニユウ・ルツク」という埋め合わせの欄があって、そちらのほうが面白かった。「あなたの心に浮んだ歌人の名前をこの下にあてはめて下さい。」とある。

 

 1 集会歌人……歌会、出版記念会、地方短歌大会などにまんべんなく顔を出して名前を売っている歌人。揶揄されているが、コロナ禍以後の歌壇にいると、懐かしささえ感じる。

 2 フアン・レター歌人……歌集が出ると誰彼となく手紙を出して褒め上げる歌人。別名ウインク歌人。時間と労力がかかっているし、行為自体はいい事だと思うけれども。

 3 ロケ歌人……旅から旅へと飛び回り、地方歌人にチヤホヤされ、花形役者になったつもりでいる歌人。好きでやってる人もいれば、頼まれて仕方なく、といった人もいる。

 4 発行所歌人……どんなに小さな雑誌でも発行所を持ちたがる歌人。これも現在ではやむを得ずその役を務める場合が多い。

 5 原爆歌人……その発言が歌壇に大きな破壊力を持つ歌人。その「唯我独尊的態度」が批判されている。少しこれは特殊な事情があって、当時原爆被害者の歌人たちは社会運動にも積極的であり、歌壇人から見ると歌壇など問題にしていないように見られたのである。そういうところからの心情的な批判も含んでいる。

 

 いまとなっては、どのタイプの歌人も批判や揶揄の対象となることは、ほぼないだろう。肝心の片山貞美「現代歌人論」は驚くほど字が細かくて、複写ではよく見えなかった。